労災保険だけでは足りない?使用者賠償責任保険の必要性を解説

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「使用者賠償責任保険ってなに?必要なの?」 「労災保険に入っていれば、使用者賠償責任は不要だよね?」 近年、労働環境の変化や業務の多様化に伴い、従業員の安全確保が企業にとってますます重要となっています。特に労災や業務災害のリスクを軽減し、従業員と企業の双方を守るために、「使用者賠償責任保険」の存在が注目されています。 会社経営では様々なリスクに備える必要があります。時には損害賠償請求を受けることもありますが、その相手は社外だけでなく従業員自身も含まれます。 従業員が業務災害に巻き込まれた場合、従業員からの損害賠償請求にも注意が必要です。業務災害による損害賠償額は高額になる可能性があり、労災保険だけではリスクをカバーしきれない場合があります。 そうした場合に役立つのが「使用者賠償責任保険」です。 本記事ではその概要や必要性、加入時のポイントについて紹介します。

※下記は、使用者賠償責任保険の一般的な補償内容等を、2023年8月時点の内容に基づき、記載したものとなります。詳細に関しては、必ず保険会社や保険代理店にお問い合わせください。

 

1.使用者賠償責任保険とは

使用者賠償責任保険は、従業員が業務中にけがや疾病を負った場合に、その損害に対する賠償責任を保護する保険です。この保険は、事業主が従業員に対する法的責任を果たす手段として重要な役割を果たします。労働災害や業務災害は、どんなに注意を払っていても完全に回避することは難しく、万が一の事故に備えて使用者賠償責任保険の加入が推奨されています。以下では、使用者賠償責任保険の詳細について解説します。

 

1-1 .労災保険とは

労働災害補償保険(労災保険)は、労働者が職場で怪我をしたり、業務遂行中に業務中に起因して怪我をした場合に、その治療費や休業手当などを補償する制度です。従業員が業務災害にあった場合、会社は従業員に対して補償することが労働基準法によって義務付けられています。一方で、業務災害によって生じる損害が高額になる場合もあり、労災保険だけで完全にカバーできないケースもあります。ここで使用者賠償責任保険が重要な役割を果たします。

 

1−2.不足額をカバー。使用者賠償責任

労災保険の給付額だけでは、事故や災害の損害を十分にカバーできないことがあります。使用者賠償責任保険は、労災保険がカバーしきれない不足分を補う役割を果たします。使用者賠償責任保険でカバーできるのは、損害賠償額そのものだけではありません。そのほかにも、慰謝料や損害賠償請求に関する訴訟費用などもカバーできます。ここでは、実際に業務災害が起こった場合の保険金支払い例を見ていきましょう。

 

1-2-1.ケーススタディー

労災に関する損害賠償金が1億円、会社の過失が10割、労災保険からの給付が1,500万円だった場合

 

労災保険からは1,500万円しか支給されませんので、1億円から1,500万円を引いた8,500万円を会社は負担しなければなりません。つまり、使用者賠償責任に加入していないと8,500万円をなんらかの形で被害者に補填しないといけません。しかし使用者賠償責任保険に加入していると、不足額の8,500万円を保険金として受け取ることができます。

 

上記のように、損害賠償金額は高額になるケースが多いことがあげられます。業務災害の発生状況によっては、労災ではカバーできない金額になる可能性があります。

使用者賠償責任保険に加入していない場合、労災給付を超える損害賠償額について会社の身銭を切って負担するしかありません。中小企業にとっては会社の存続を揺るがす金額になるかもしれません。

過去の裁判においては、業務災害に対する損害賠償額として約2億円の支払いを会社に命じた例があります。万が一に備え、賠償金の支払いによって会社経営が継続できなくなるリスクを回避するためにも、使用者賠償責任保険に加入しておく必要があるといえるでしょう。

2.加入時のポイント 2点

 

2-1.適切な補償範囲の確認

使用者賠償責任保険の補償範囲や補償内容を確認し、従業員と企業のリスクに適したプランを選ぶことが重要です。企業の従業員数や業務内容によって、必要な補償額は様々です。業種によっては、仕事を受託する際の条件に、使用者賠償責任への加入が義務付けられているケースもあるので、要注意です。

 

2-2.適切な保険料

保険料は加入する企業の業種や従業員数によって異なります。定期的な見直しを行い、最適なプランを選ぶことを心がけましょう。

 

3.まとめ

使用者賠償責任保険は、労災や業務災害に対する企業の責任を補償し、従業員と企業の安全を守るための重要な保険です。労災保険だけではカバーしきれない損害をカバーし、万が一の事故に備えるために、適切な補償範囲と保険料の見直しを行いながら、使用者賠償責任保険の活用を検討することをおすすめします。

 

 

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