経営者と従業員のトラブルに保険は必要なの? 「パワハラ防止法」が2022年4月からすべての企業で義務化

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近年、企業経営はますます複雑化し、経営者と従業員との労使関係に関わるリスクも増加しています。2022年4月にはパワハラ防止法(正式名称:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)に関する法改正が行われ、パワーハラスメント防止に関する規定が盛り込まれるなど、使用者はより一層ハラスメント対策が必要な時代となりました。雇用トラブルによる労働者から使用者への損害賠償請求が増加しており、使用者は賠償請求リスクへ備えておく必要があります。経営者にとって厳しい環境のなか、雇用トラブルを避ける手法のひとつとして、雇用慣行賠償責任保険が注目されています。雇用慣行賠償責任保険は果たして必要なのでしょうか?本記事では、雇用慣行リスクについて説明した後、雇用慣行賠償責任保険について詳しく解説し、加入時のポイントをお伝えします。

著・監修:2級ファイナンシャル・プランニング技能士

1.近年で増加中?雇用慣行リスクとは

従業員の雇用に関する賠償リスクは、従業員と企業の間のトラブルであり、上司が部下にに対して行うパワーハラスメント等のハラスメントトラブルや、雇用契約に関する不当解雇等を差します。近年、雇用問題・ハラスメント問題をはじめとする雇用トラブルは多岐に渡っており、完全に防ぐことが出来ないという性質を有します。厚生労働省の調査では、「職場におけるいじめ、嫌がらせのの相談件数」は年々増加の一途を辿っており、2006年と比較して4倍以上の相談件数が寄せられています。
雇用慣行に起因する賠償リスクの増大や上記性質を踏まえ、適切なリスクマネジメントを行う必要があるといえます。

 

 

2.経営者と従業員のトラブルに対応する保険(雇用慣行賠償責任保険)とは?

前述のリスクマネジメントの1つとして「雇用慣行賠償責任保険」があげられます。「雇用慣行賠償責任保険」は、従業員等に対して行ったハラスメント・不当解雇等の不当行為、または、第三者に対して行ったハラスメント・人格権侵害に起因して、損害賠償請求がなされたことにより、事業者等が負担する法律上の損害賠償責任や訴訟費用等を補償します。雇用慣行賠償責任保険は、企業が従業員との雇用関係における法的紛争や訴訟に備えるための保険です。

 

法律上の損害賠償金

被保険者(当該企業・役員・使用人)が、従業員に対して行ったハラスメント行為や雇用トラブルに起因して、法律上の賠償責任を負担することによって被る損害を補償

 

訴訟費用等

弁護士費用や証拠収集のために要した費用など

 

2-1.雇用慣行賠償責任の事故例

雇用慣行賠償責任保険が必要な理由を理解するために、実際の事故例を見てみましょう。

パワハラを受ける人

 

事例1: セクシュアルハラスメント

女性社員は、上司である男性社員から日常的に体を触られるなどのセクハラを受けていた。職場に出社することができなくなりやむなく退職した。退職後、女性元社員は、男性社員と会社を相手取り損害賠償を求める損害賠償請求を提起した。

 

事例2: 職場いじめ・パワーハラスメント

別の企業では、部下が上司から、日常的に暴言を受けたり無理のある締切日を設定されたりするなどのパワハラを受けていた。上司という立場を利用し日常的に無理難題を押し付けることはパワーハラスメントにあたるとして、元社員は、上司と会社を相手取り、損害賠償を求める損害賠償請求を提起した。

 

上記2事例ではいずれも、雇用慣行賠償責任が活躍する場面です。雇用慣行リスクは顕在化していない特徴があるため、予め備えておくことが重要です。

 

3.雇用慣行賠償責任保険加入時のポイント

雇用慣行賠償責任保険を選ぶ際に考慮すべき重要なポイントがあります。

適切な保険金額の選択

雇用慣行賠償責任加入時は、適切な保険金額、カバレッジを選ぶことが重要です。保険プランは企業の規模や業種によって異なります。自社のリスクを適切に評価し、適切な補償金額を選びましょう。

 

4.まとめ

雇用慣行賠償責任保険は、企業が雇用慣行リスクに対処し、法的トラブルから保護するために不可欠なツールです。適切な補償金額を選択し、リスク管理を強化することで、従業員との関係を円滑に保ち、企業の継続性、安定性を確保できます。雇用慣行賠償責任保険は、近年ますますその重要性を増しており、企業経営において無視できない存在となっています。今後、従業員との雇用関係において発生するリスクに備えるために、雇用慣行賠償責任の検討をお勧めします。

 

著・監修:2級ファイナンシャル・プランニング技能士

 

 

 

 

 

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